静狩峠
来馬川から寿都湾までは直線距離で約26キロだから、何と、約50対1という比率で太平洋側に偏った、極端に非対称な分水界なのである。
しかも、分水界の一番低いところは来馬川の河床とほとんど同じ高さであるのに対して、そこと海との間は180メートルもの高さの断崖になっている。
だから、両側の傾斜と高さとがともにひどくちがうという意味でも、この分水界は極端に非対称なのだ。
こんな奇妙な地形がどうしてできたのかはわからないのだが、これを地図の上で眺めているだけでなく実際にこの眼で見たい、というのが、このために北海道 旅行を決行した私を静狩峠へ向かわせた、もう一つの動因であった。
というわけで、峠でみんなと一緒に一休みしたあと、改めて心を躍らせて、来馬川の谷への下りにかかったのである。
道はなおも3度、谷奥へ入りこむ迂回を繰り返しながら、次第に谷底へ降りていった。
降り切ったところで現国道に合し、1キロほど東でまたそれと別れるが、その途中で来馬川を渡る。
川幅は3メートルぐらい。
澄んで底の礫をすかしているのになぜか赤紫がかった黒に見える水と、川岸の林の日にきらめく若緑との取り合わせが眼を細めさせた。